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[コラム]2011年のおすすめゲーム本5冊

ゲームで遊ぶのも楽しいわけですが、ゲームについて語るのもまた、楽しいもの。今回は、そんな「ゲーム語り」の楽しみを味わえる、2011年に発売された「ゲーム本」から個人的にお勧めの5冊をご紹介します。
『超クソゲー3』(太田出版:多根清史、阿部広樹、箭本進一 著)
まずは久々の復活を果たした「クソゲー」本のオリジンであるこの本から。阿部広樹さん&箭本進一さんによる第一作目『超クソゲー』が刊行されたのが1998年、三人目の著者として多根清史さんを加えた第二作目『超クソゲー2』が2000年刊行ですから(間に関連シリーズがいくつか出ているとは言え)、実に11年ぶりの復活です。
このシリーズが、日本の(特にWebにおける)「ゲーム語り」に与えた影響はとても大きなものでした。どうしようもなく駄目なゲームやあまりにも突破者で過剰な部分のあるゲームを「クソゲー」としてみんなで楽しげに語り合う、という文化が広く一般の(?)ゲームファンに根付いたのは、このシリーズの功績と言っても過言ではないでしょう。
しかし、本シリーズ不在の十年のあいだに、「クソゲー」語りはあまりにも安易に消費されるものになってしまったかもしれません。あたかも、世の中のゲームのすべては「クソゲー」と「神ゲー」のどちらかでしかないという単純な視点、ちょっと自分の気に入らない部分があるとすぐにクソゲーとわめきちらし、一方で発売前のプレビュー動画だけを見て神ゲーだと言う軽々しい言葉のやりとり、空騒ぎ......これが、デジタルの悲しみ......。
11年ぶりに刊行された本書を読むと、そのような現在の「クソゲー」を巡る状況について、著者たちが「......ケジメ、つけたる......!」と静かに滾っているかのような熱気を感じました。俎上に上げられるのはPS2以降の問題作や一部で話題となった傑作たち。そのチョイスには、すでにWeb上でさんざん語り尽くされているかに思える作品もありますが、そこはさすがこのジャンルのオリジン。何について語るのかではなく「どう語るのか」こそが肝心なのだと示してくれます。レトリックを駆使したおちょくり、業界ぶっちゃけ的ブラック話、作品に寄り添うような優しい視点の良かった探し......著者三人三様の「語り」の振幅がこのボリューム(約300ページ)と合わさり、一気読み後は胸焼けにも似た満足感を味わえることでしょう。また、レビューの他にも特集記事が何本か掲載されていますが、中でも「伝説の活字系ゲーム雑誌『ゲーム批評』は何に敗れたか?」は「ゲーム語り」状況の推移を探るうえでも興味深いものでした。
なお、前二作の内容をリミックス&新規書き下ろしを加えた『超クソゲー1+2』も同時期に刊行されました。前作を未読の方はこちらもどうぞ。
『超実録裏話 ファミマガ 創刊26年目に明かされる制作秘話集』(徳間書店:山本直人 著)
次は日本におけるゲームマスコミ草創期の貴重な資料ともいえる一冊。著者の山本直人さんは、1985年に創刊された日本初のファミコン専門誌「ファミリーコンピュータMagazine」(ファミマガ)に立ち上げ時期からスタッフとして参加、後に二代目編集長となった方。
まだ海のものとも山のものともつかぬ「家庭用ゲーム機」に、マスコミが誕生した時期。画面写真一枚撮るのもまさに手探りです。そんな「日本のゲームマスコミの少年時代」を、実際のファミマガの誌面や貴重な図版資料を豊富に使ってコラム形式で語っていくのが本書の内容。127ページと薄い本ではあるのですが、掲載されている資料のボリュームがかなりあり、かつファミマガの誌面であればギリギリ文章が読める縮尺で掲載されているため、それも含めてじっくり読むと体感で2倍くらいの濃密さです。
後続のライバル誌との微妙な関係(特にスーパーマリオ256Wに関しての「ファミコン必勝本」とのスタンスの違い)、とあるメーカーと険悪な状況になったときにファミマガが「徳間書店」刊行であることが思わぬところで功を奏したエピソード(ネタバレになるので詳細は控えますが、ヒントは裏技、リセット連打、シバの女王)、などなどまさに「秘話」といえるエピソードが山盛り。もちろんファミマガ名物「ウソ技クイズ」についてもじっくり紙幅を割いています。初期ウソ技記事70本の再掲+解説は必見。
というように、当時ファミマガを読んでいた元ファミっ子ならマストバイの内容となっています。そうじゃなくてこの項に出てくる単語を見てもなんのことだかわからないヤングたちも、バーチャルコンソールのお供にいいかもしれません。
『死ぬまでにやりたいゲーム1001』(ボーンデジタル:トニー・モット 編)
アメリカの美術系出版社・Rizzoliが『1001 ●●● You Must ××× Before You Die』(死ぬまでに×××したい1001の●●●)というカタログ本のシリーズを出しているのですが、2010年に出たのが『1001 Video Games You Must Play Before You Die』。その名のとおり1001本の「死ぬまでにあなたがプレイすべき」ゲームをレビューしたこの本、960ページもあります。これはたぶん邦訳は出ないだろうと思って原書を購入し、英語は斜め読みで豊富な画面写真を眺めながら一人悦に入っていたのですが、なんと今年に入ってまさかの日本版発売! ちょっと涙目になりながらも、ええもちろん購入しましたよ......。
そんな個人的な事情はともかく、この本はとにかくそのボリュームに圧倒されます。1001本すべてに、単なる紹介に留まらないそれなりの文量のレビューが付き、その多くが画面写真付き。選ばれた1001本がどんなラインナップなのかは、ボーンデジタルの公式サイトで紹介されていますので、気になる方はチェックしてみてください。編者のトニー・モットさんはイギリスのゲーム雑誌「EDGE」の編集長で、この本の執筆者たちも欧米のゲームライターが中心となっています。そのため、1001本のチョイスと評価も「欧米のゲーム史観」からのもの。日本のゲームファン的にはなかなか新鮮な視点として読める部分もあり、これも本書の面白い点です。例えば『ゼビウス』については「日本以外ではヒットせず正当な評価もされていないがゲーム史的には重要な作品」という論調だったりします。
1001本とは言え、どうしてあれが入っていないの? という部分はありますし、そもそも日本で独自の進化・深化をしているジャンルの作品については言及がありません。でもそれはしかたのないこと。本当に「死ぬまでにプレイすべき」ゲームをまとめるなら、すでに1001本にまとめるのは無理だというのはわかりきったことです。欧米のゲーム史観の一端を知り、翻って日本の、自分のゲーム史観を再認識する......寝る前にぱらぱらとめくりつつ、ゆっくりとそういうことを考えるにはうってつけの本です。
『ゲームになった映画たち 完全版』(マイクロマガジン社:ジャンクハンター吉田 著)
さて、紹介しているゲームの本数という意味では、こちらの本も引けを取りません。そしてこちらで紹介されているゲームはニッチかつマニアック。
もともとは2008年に別の出版社から発行されていた同名書籍の増補改訂版ですが、今回加筆修正された部分が100ページ以上ということで、まさに「完全版」の名に恥じないものと言えるでしょう。タイトルのとおり、古今東西の映画原作ゲームを集めた本なのですが、この「古今東西」っぷりが半端ありません。その数約300本超。え、こんな映画もゲームになっていたの! と驚くことうけあいです。
ええとですね、昔に比べて少しはマシになったり、時には傑作も出てきているとはいえ、「映画」原作もののゲームというとぶっちゃけナニなイメージがつきまといますよね。にもかかわらず、なぜ今でも大作ハリウッド映画が公開されるとそれを原作としたゲームが作られるのか......「ビデオゲーム」市場の誕生と「映画」業界の関係、技術・人材の交流、ビデオゲーム世代の映画人の台頭、エトセトラ、エトセトラ。各ゲームの紹介と映画にまつわる蘊蓄から、そのような「映画とゲームの業界史」がほのかに立ち上がってくるところがまさに「シネマゲーム研究読本」のサブタイトルに違わない内容となっています。どちらかというと「ゲームも遊ぶ映画ファン」向けの本ではありますが、日本ではこのジャンル唯一無二の資料性を誇る本であることは確か。ゲームファンも要チェックです。
『幸せな未来は「ゲーム」が創る』(早川書房:ジェイン・マクゴニガル)
最後はこちら。この本は他の4冊とは違い、何か具体的な「ゲーム」について語る、という本ではありません。では何について語るのか? それは「ゲーム」という方法論、ツールの有効性についてです。
ネットではよく「現実が無理ゲーすぎる」的な愚痴や自虐を目にします。普段プレイしている「よくできたビデオゲーム」の明確なルールと達成すべき目標、適切な難易度調整、一定の目標を達成するたびに支払われる報酬やアンロックシステムなどなどと比べ、我々をとりまく「現実」の複雑怪奇なシステムと理不尽さはクリアするのが絶望的なクソゲー以下のもの(しかもプレイはやめられない)という嘆きで、「ゲームと現実は違う」というごく当たり前の(と我々が思っている)結論を前提としたジョークです。
でもちょっと待って、そんな無理ゲーの「現実」を優れたゲームデザイナーがチューニングして、面白そうなルールを整備し、挑戦しがいのある目標と難易度を設定し、フィードバックシステムとマルチプレイを付け加えたら、「神ゲー」になれるんじゃない......? というのが本書の主張。ここで短くまとめてしまうと突拍子もない主張に思われるかもしれませんが、著者はこの主張を豊富な実例を挙げ丁寧に解説していきます。『ヘイロー』や『ワールド・オブ・ウォークラフト』などのマルチプレイネットゲーム、『ファームビル』などのソーシャルゲーム。そして、「ゲーム」の持つ面白さを使って「現実」の問題をより楽しく、誰でも参加しやすく、クリアしやすくするための方法論として、著者は「ARG」を詳細に分析します。ARG(Alternate Reality Game)とは、Webや新聞、雑誌、広告、テレビ番組など、現実にある複数のメディアで断片的に語られる情報を入手し、参加者の集合知で謎解きをしたりコミュニケーションを深めたりするイベント型エンターテインメントのこと。日本語では「代替現実ゲーム」と訳されます。
実際にいくつかのARGのゲームデザインを行い成功を収めてきた著者は、面倒な調査作業や社会貢献活動、省エネ運動などの「現実」の仕事に、ゲーム的な要素(例えばプレイヤーランキングの公開やバーチャルな報酬、クエスト形式での目標設定など)を取り入れて広く人々の参加を促した結果、短期間でめざましい成果を挙げた実例を紹介していきます。
我々を取り巻く「この」現実が無理ゲーなら、そこに「代わりの(Alternate)」現実=ゲームのシステムをかぶせて楽しく遊べるようにすればいんじゃね? これ、元はどうしようもないクソゲーだったけど、ツールで解析してパラメータいじったら意外に遊べるようになったぜ、ついでにニコ動で実況とか【やらせてみた】動画とか公開してみるぜ、的なノリで(いや、こんなことは本書に出てきませんが)現実の問題に対処しようという、実に前向きなメッセージの本でした。この方法論が、本書で紹介されているような一部の幸せな成功例のみに留まらず、実際にこれからも様々な分野で応用可能なのかどうかは何年か後に振り返らないとわからないでしょうが、これからの世界における「ゲーム」の広い可能性を考えるうえでお勧めの一冊です。
(マコ小林)

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